論文は正しい。だが万能ではない ──「ボリューム理論」だけでは説明できない現場の伸び方

トレーニング理論を学んでいくと、どうしても一度はここに行き着きます。

  • ボリュームが大事
  • 総負荷が正義
  • 回数・セットを積めば伸びる

これらは間違っていません。論文的にも、理論的にも正しい。

ただ、現場で指導しているとこう感じる瞬間があります。

「理屈通りやっているのに、伸びる人と、止まる人がはっきり分かれる」

この差はどこから生まれるのか。それを象徴するケースを一つ紹介します。


8×2という、かなり攻めた選択

このクライアントは、85kg×9回(10回狙い)まで伸びていたものの、その後ベンチプレスの調子を落としました。

  • 85kg×6回が2回続く
  • それ以前はもっと回せていた
  • 体重は減量中

セオリー通りなら、

  • ボリュームを増やす
  • 回数を確保する
  • 重量は一度落とす

こう考える人が多いと思います。

ただこの時、私が最初にやったのはベンチの頻度を「週3 → 週2」に落とすことでした。

そして、その上で選んだのが8回×2セット(8×2)です。

しかも重要なのは、

  • 2セットとも8回できなくてもOK
  • 1セット目が8回できたら、次回2.5kg増やす

という進め方でした。

理論だけを見ると、
「ボリューム不足では?」「重量を攻めすぎでは?」と思われても不思議ではありません。
そう見えると思います。


なぜ8×2にしたのか(直感ではない)

この判断は「ノリ」や「勘」ではありません。

85kg×6回が2回続いたことで、私はこう考えました。

  • 刺激が足りないのではなく
  • 回復が追いついていない可能性が高い

実際この時点で、

  • 2セット目の落ち込みが大きい
  • 回数の再現性が不安定

という兆候も見えていました。

そこで、

  • 頻度を落とす
  • セット数は最小限
  • 1セット目の質を最優先

この条件を満たす形として8×2に切り替えました。


結果:減量中にもかかわらず伸びた

この方法に切り替えてから、

  • 2〜3サイクルで 120kg×7回 に到達
  • その後ピーキングを行い 140kg を成功

しかもこれは減量中です。

セオリーだけを見ると「本当にそれで伸びるのか?」と思われても不思議ではありません。


さらに重要なのは「その後」

ここで終わりではありません。

増量期に入ってからは、

  • 週2 → 週3に頻度アップ
  • 8×2〜3セットに増量
  • 全セット8回できる状態でも崩れなかった

結果として、半年で170kgを達成

同じ人でも、

  • 最初は「最低限のボリューム」
  • その後「ボリュームに耐えられる身体」に変化

しています。


補足:重量を落とす勇気

増量期に入ってからも、一度140kgが上がったあと、

  • 100kg×8×2〜3 まで重量を落とし
  • 8回が崩れたら105〜110kgまで戻す
  • 再び2.5kgずつ積み上げる

このサイクルを繰り返し、145kg×8回 まで到達しています。

「一度上がった重量に固執しない」
これも、長く伸び続ける人の共通点です。


論文は「平均」、現場は「個別」

ここで言いたいのは、

  • ボリューム理論は正しい
  • 8×2が最強と言いたいわけでもない

ということです。

ただし、

  • 人には適正なボリュームがある
  • 状況によって「減らすべき時」「増やせる時」が変わる

論文は「平均」を教えてくれますが、現場では「個別対応」が必要になります。


結論

  • 理論は指針になる
  • だが万能ではない
  • 伸びるかどうかは「自分の反応を見て調整できるか」

重量を落とすことも、セットを減らすことも、頻度を下げることも、後退ではなく前進の準備です。


次に読む(内部リンク)

関連①:
ボリュームとは何か|やりすぎの正体

関連②:
限界までやるべきか?——「追い込まないと意味がない」という誤解


補足資料(興味ある人向け)

  • 【170kg成功時の動画】
  • 【InBody測定(98kg/103点)】
  • 【本人からのLINEメッセージ】
  • 【ベンチ100kgまでのExcel記録】

170kg成功時の動画

InBody測定(98kg/103点)

Screenshot

本人からのLINEメッセージ

Screenshot

ベンチ100kgまでのExcel記録

日付 種目 セット 使用重量 回数 体重 備考欄
17/10/23(月) ベンチプレス 1 80.0kg 10 110.0kg
17/10/27(金) ベンチプレス 1 85.0kg 9 109.0kg 85kgで止まる
17/10/30(月) ベンチプレス 1 85.0kg 6 109.2kg
17/10/30(月) ベンチプレス 2 85.0kg 4 109.2kg
17/11/1(水) ベンチプレス 1 85.0kg 6 108.8kg
17/11/1(水) ベンチプレス 2 85.0kg 3 108.8kg 金曜ベンチなし
17/11/6(月) ベンチプレス 1 85.0kg 10 108.0kg ここから水曜ベンチなし
17/11/6(月) ベンチプレス 2 85.0kg 6 108.0kg 2セット目落ちやすい
17/11/6(月) ベンチプレス 3 85.0kg 5 108.0kg
17/11/10(金) ベンチプレス 1 87.5kg 10 107.0kg
17/11/10(金) ベンチプレス 2 87.5kg 5 107.0kg 2セット目落ちやすい
17/11/13(月) ベンチプレス 1 90.0kg 8 107.2kg ここから8レップ→2.5kgUP
17/11/13(月) ベンチプレス 2 90.0kg 7 107.2kg
17/11/13(月) ベンチプレス 3 90.0kg 5 107.2kg 3セットなし 次回から8×2
17/11/17(金) ベンチプレス 1 92.5kg 8 106.6kg
17/11/17(金) ベンチプレス 2 92.5kg 7 106.6kg
17/11/20(月) ベンチプレス 1 95.0kg 8 107.0kg
17/11/20(月) ベンチプレス 2 95.0kg 6 107.0kg
17/11/24(金) ベンチプレス 1 97.5kg 8 106.0kg
17/11/24(金) ベンチプレス 2 97.5kg 6 106.0kg
17/12/1(金) ベンチプレス 1 100.0kg 8 104.8kg
17/12/1(金) ベンチプレス 2 100.0kg 6 104.8kg

※本文ではベンチと体重のみを扱っていますが、実際には脚・背中・肩・腕のトレーニングやキックボクシング(ミット・サンドバッグ)も行っていました。

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